kotomonasha

二歩目に文章を書いてみる。

29 初動

十一月末から昨日まで、ひたすらセーターを編んでいた。ひとのデザインを完成間近でほどくというのを何回か繰り返した挙句、やっぱり着てみるとサイズが違うとかではなく、形がしっくりこないので、いちから編みなおすことにした。ひとの作ったもので自分の体に合うものを見つけるのはかなり難しいことなのかもしれない。いちど編んだぶかぶかめのセーター、サイズを決めれば簡単に編めるものを今度はぴったりサイズで編んでみることに。と言いつつサイズを決めることに慣れておらず想定していたものより大きくなりそう。七割ほど編んだところで、長時間編む手が違う方向に意識が向きだした。気が散るといえばそうだが、他のことをやらねばならないかなという気持ちを無視できなくなってきたのだ。編み物自体では金は開稼げないとわかっているから。

 十一月末はすこしだけ足を動かしたことで、外への意識と自信の根本的なものを刺激され、動き出したい、手を動かさないといけない。という前向きな焦燥感に駆られつつ、重い腰は軽くならないし、ない体力はいきなり湧いてこないので、その場にとどまって、もがもが身をよじっていた。少しずつ進めたいが、手を動かさない事には始まらず焦っている。今もそんな感じか続いている。

 物件のサイトで2.5万、3万、保証人不要、要保証会社、という文字を眺めまわし、希望と、準備の途方も無さを同時に確かめた。

 切り倒された木は放っておいたら土にかえる。一本の木でさえ、私の手には負えない。よくて三分の一、他はすべて土にかえる。それでいいのではないかと思えた。土にしてしまう、早く動かねばと思いつつ何もできずにいた心境とはまた違う。自然に対して親切心はいらないという考えは変わらないので、焦りはある。焦って、硬くなって動かないか、元来の怠けで動かないかのどっちかだったので、活動につながるほどの焦りはとてもうれしい。